銅版を世界に送って土に埋めてもらい、掘り出して返送してもらった版を銅版画の方法でプリントして制作した今回のプロジェクト。
本来であれば2020年に開催される予定がコロナで延期になりましたが、2022年6月11日から26日の会期で、無事フランスでの展示を開催することができました。
開催にあたっては、素敵なデザインのカタログを制作していただくことができ、日本語とフランス語でみなさんが書いてくださった銅版の物語を、刷り上がった作品とともに冊子にまとめることができました。
タイトルは、「土は囁く」です。
銅版プロジェクトにご協力いただいたみなさんには、随時こちらのカタログをお渡ししています。本当にありがとうございました。
フランスでの展示の様子をご紹介します。
場所はパリから急行で1時間ほど、Yonne地方のJoigny。近年、多くのアーティストさんたちが移り住んで活動をしている活気のある街です。その街の中心にある、古いお城を改装した市の展示スペースで、友人であるJoignyのアーティスト、Claire Marinとの2人展という形で開催されました。
タイトルは、日本語では「すべての声は大地に通じる」の意。Clairは日本への旅行以来、モノトーンで表現するカリグラフィの世界に魅了され、自信でのルーツでもあるヘブライ語のカリグラフィーを中心とした作品を精力的に制作、本も出版するなど精力的に活躍している素敵な女性です。
展覧会ギャラリーの入り口です。今回はウクライナ事案の影響で、航空便での貨物がストップしてしまい、作品を送付できずスーツケースに詰めて持参しなくてはいけない状況になったため、額を使う展示をあきらめ、JoignyでClaireが場所に合わせて用意してくれた木枠にレイアウトする形で展示しました。
シルクスクリーンの原版を作る木枠に、ペイントして作った額。これがとても素敵な雰囲気を醸し出してくれて、来場者からの評判もよかったです。
銅版は、返送していただいた直後に、ついた土などを洗い落とすことなく、1回目に黒いインクを使って剃りました。この1回目のプリントを、カタログに収録しています。
その後、いただいたストーリーを読み解きながら、色の配色をしたものを2版、3版と刷っていったものを桐の板に張り込んだものが上記の写真の作品です。
また、同様に紙に張り込んだ作品も制作しました。
こちらには、いただいたストーリーの中から象徴的な言葉を3つづつ抽出し、フランス語と日本語で書いています。
これらの作品は、フランスでとても興味を持っていただきました。
「これは、俳句だね」
という感想がとても多かったです。
フランス語はHを発音しないので、最初は、アイク、アイコ といろいろ言われて??だったのですが、西洋の「説明」を必要とする文化と対極の、最小限の言葉で想像をかきたてるスタイルは、「自分達は到底できないけれど、すばらしい世界観だと思う」という感想が多かったです。
この展示会場は3つの部屋を持つため、1つ目の部屋は2人のそれぞれの作品を。2つ目と3つ目の部屋はコラボレーションの作品を展示しました。
左は2つ目の部屋。コラボ作品に赤い糸の山を配置したものに、両脇には「Chemin d'écrire」書への道を作りました。左が私の書道、右がClaireのヘブライ語のカリグラフィです。
3つ目の部屋は、彼女が日本の都市「東京、富士、奈良、京都、広島」5つを選んで制作したカリグラフィーの作品に、私のブッダの銅版画をコラボレーションしました。
3つ目の部屋のブッダはとても評判がよく、いろいろな場所にお嫁入りしてもらい、うれしかったです。インドから旅行中という家族が持ち帰ってくれたのも、素敵な思い出となりました。
3週間にわたる展示では、つたないフランス語での説明を求められることも多く、アートが解釈と会話で成立している国の底力を感じました。
また、絵画と「言葉」について、絵画と「書」について、深く考える機会を得られたことも大きな経験となりました。
展示の最終日は「Minuit Blanche」といって、アーティストが集まり会場を午前0時まで開けてアートの夜ふかしを楽しむお祭りがあり、こちらにも参加しました。
この1日のために制作したコラボの「掛け軸」、春夏秋冬の4枚を会場の入り口にかけ、当日は夜遅くまでこの場所でコンサートなども行いました。
今回の展示での出会いから、新しく絵本を作るオファーをいただいたり、来年の秋のパリでの展示も決まるなど、実りある3週間でした。コロナで渡航も簡単ではありませんでしたが、2ヶ月半の滞在で得たものは大きかったように思います。
銅版プロジェクトに協力いただいたみなさま、本当にありがとうございました。
「土は囁く」については、2022年12月1日から9日
東京都渋谷区のBunkamura Wall Gallery にて一部を再展示いたします。
またご案内させていただきます。
ありがとうございました。
IzoomI ももせいづみ
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